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五十川将史の「ハローワーク採用を極める」メールマガジン
第41号 2025/7/4発行
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皆さん、こんにちは。社会保険労務士の五十川将史(いかがわ まさし)です。
いつもメールマガジンをご覧いただき、誠にありがとうございます。
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【テーマ】
はじめての新規高卒者採用において知っておきたい仕組みやルール
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【Q&A】
Q. 高卒の新卒採用に初めて取り組もうと思っています。何に注意すればよいですか?
A. 高卒採用には独自の「就職慣行」があり、自由市場とは異なるルールに基づいて行われます。
まずはこの仕組みを知ることが、成功への第一歩です。
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【解説】
今、高卒採用市場が熱を帯びています。
日経新聞(2025年7月2日付)によれば、2026年春卒業予定の高卒求人倍率は過去最高水準となる見込みで、初任給が大卒平均を上回る例も報告されています。
さらに、朝日新聞(2025年7月2日配信)では、「工業高校の求人倍率が異例の20倍超」と報じられるなど、製造業・技術系人材の採用競争が激化。
こうした背景もあり、中小企業にとって「地元志向で長く働いてくれる高卒人材」はますます貴重な存在となっています。
とはいえ、高卒採用には独自のルールがあり、大学生の採用とはまったく違うアプローチが求められます。
今回は、はじめて高卒採用に取り組む企業の方に向けて、その基本と注意点をわかりやすくお伝えします。
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■ 高卒採用は「三者協定」に基づく“特別ルール”
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高卒採用は、各都道府県の「高等学校就職問題検討会議」などを通じて、学校・行政・経済団体が協議してルールを定めています。
基本スケジュールは全国共通で、次のような流れです:
・7月1日以降:高校への求人票提出解禁
・9月5日以降:応募開始(原則「一人1社」)
・9月16日以降:選考開始
これに加え、地域ごとに「訪問ルール」や「見学方法」に関する“ローカルルール”が設定されていることもあり、最初に地元のハローワーク・高校との連携が欠かせません。
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■ 最大の特徴は「応募は原則、一人1社」
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高卒採用には「応募は一人1社」という全国的な慣行があります。
生徒が1回に応募できるのは1社のみ。9月の応募解禁から一定期間(多くは9月末または10月末)までは、このルールが厳格に運用されます。
この制度は:
✓ 内定辞退が少なく、企業にとっては採用効率が高い
✓ 生徒が連続して落ちるリスクを避け、就職率の向上に寄与
✓ 学業への影響を抑え、就職活動を短期間に集中させる
といった目的で運用されています。
ただし、最近では一部の県で「最初から複数応募」を認める柔軟な運用も始まっており、動向を把握しておくことが重要です。
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■ 採用活動は「超短期決戦」
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高卒採用のスケジュールは非常にタイトで、約3か月の集中戦となります。
▼標準的な流れ
・6月1日 求人申込(ハローワーク)
・7月1日 高校へ求人票持参・郵送
・7月中旬 三者面談で応募企業を選定
・8月 職場見学(任意)
・9月5日 応募開始
・9月16日 選考開始
一次募集で人材確保できなかった企業や、内定が出なかった生徒を対象に、10月以降に二次募集(複数応募可)もあります。
ただし、有望な生徒は一次で決まることが多いため、準備・対応の質が問われます。
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■ “先生と生徒に伝わる”求人票が鍵
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高卒求人は、生徒自身だけでなく、担任・進路指導の先生や保護者が内容を読み、企業選びに影響を与えます。
そのため、求人票には“見せ方”の工夫が不可欠です。
たとえば:
・「入社後3か月は先輩社員と現場を同行し、業務を習得」
・「職場の3割が20代。年の近い先輩に相談しやすい環境です」
・「見学で実際の作業体験も可能。質問も大歓迎」
…といった、日常の様子が思い浮かぶような記述は、先生にも紹介されやすく、結果的に応募につながりやすくなります。
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■ 工業高校人気は加熱中!製造業・技術系は争奪戦へ
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朝日新聞の報道によると、ある県では工業高校の求人倍率が“異例の20倍超”を記録。
企業の争奪戦はすでに始まっており、「若手の技術系人材が欲しい」と考えている企業にとっては、まさに危機感をもって挑むべきフェーズに入っています。
だからこそ、求人票や会社案内だけでなく、「職場見学の受け入れ体制」や「入社後の教育の仕組み」を、いかにわかりやすく伝えられるかが勝負の分かれ目です。
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■ まとめ:ルールを知り、“見せ方”と“スピード”で差をつける
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高卒採用は、四大卒のような自由な採用活動とは違います。
ルールを知らずに動いてしまうと、応募が集まらないだけでなく、学校との信頼関係にも悪影響を及ぼしかねません。
逆に、ルールを理解し、学校・生徒・保護者に「伝わる情報」を丁寧に発信できれば、地元志向の優秀な若手と出会える大きなチャンスになります。
高卒採用は、もはや“選ばれる企業”だけのものではありません。
“選ばれるように変わろうとする企業”にも十分にチャンスがあります。
まずは基本を押さえ、今夏の採用活動に備えていきましょう。
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次号(第42号)は、2025年7月11日(金)配信予定です。
テーマは「Q.ハローワークで採用を進めるにはどのような福利厚生が効果的ですか?」です。
引き続き、ご愛読のほどよろしくお願いいたします!
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