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五十川将史の「ハローワーク採用を極める」メールマガジン
第30号 2025/4/18 発行
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皆さん、こんにちは。社会保険労務士の五十川将史(いかがわ まさし)です。
いつもメールマガジンをご覧いただき、誠にありがとうございます。
ある経営者の方との会話で、こんなやり取りがありました。
「ハローワークで応募が来ないんですよ……やっぱりウチみたいな小さな会社じゃダメなんですかね?」
と社長がつぶやくと、 隣で聞いていた奥さまが、
「はいはい、また“中小企業だから病”が出てるわよ」と、半ばあきれた表情。
その場にいた全員が、思わず笑ってうなずいてしまいました(笑)。
でも実は、この“中小企業だから採用できない”という思い込み、
ハローワーク採用においては、根拠のないケースが多いのです。
そもそも、ハローワークに求人を出している企業の9割以上は中小企業。
つまり、“小さいからダメ”なのではなく、
“伝え方でもったいないことをしている”ケースがほとんどなのです。
今回は、そんな中小・零細企業が
「だからこそ選ばれる求人票」をどう作っていくかについて、
具体的な工夫や表現のヒントをお伝えしていきます。
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【Q&Aコーナー】
Q. 中小・零細企業なので,ハローワークでも採用できないのでは?
A. 中小企業だからこそ実現できる働き方や魅力・メリットを、求人票の中でしっかり伝えることが大切です。
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【解説】
「うちは中小企業だから、やっぱり採用は難しいですよね…」
そんなご相談をいただくことがありますが――安心してください。
ハローワークに求人を出している企業のうち、約9割は従業員100人未満の中小企業です。
(厚労省「公共職業安定所の主な取組と実績」平成30年7月公表)
つまり、自社が中小・零細企業であったとしても、ハローワークでの“ライバル企業”もほとんどが同じ立場。
中小企業だから採用できない、というのは実は思い込みにすぎません。
もちろん、求職者の中には大手志向の方もいます。
しかし、ハローワークを利用する求職者は
「地元で働きたい」「通勤時間を抑えたい」など、
生活に根ざした希望を持っている方が多いのも事実です。
実際、私がハローワークに勤務していたときも、次のような声を多く聞いてきました。
- 「大きな組織の歯車として働くのは性に合わなかった」
- 「社員数が多すぎて人間関係に疲れてしまった」
- 「希望の部署に配属されず、やりたい仕事ができなかった」
- 「家庭の事情で地元に戻ってきた」
- 「新卒の時には会社の名前や規模だけで選んでしまって失敗した」
そういった方々が、“地元の中小企業で、やりがいや居心地の良さを大切にしたい”という思いで、
ハローワークの求人票を見に来ているのです。
ただし――肝心の求人票に、そうした魅力が書かれていないケースも多々あります。
また、「有料の求人媒体なら、もっと優秀な人材が採用できるのでは?」という声もあります。
確かに、有料媒体にはスキルの高い求職者や転職意欲の高い方が
多く集まる傾向がありますが、その分、掲載企業の“レベル”も上がります。
給与水準、福利厚生、知名度、企業規模――
ライバル企業が強力になる中で、埋もれてしまう可能性も高くなってしまうのです。
その点、ハローワークには「地元で安定して働きたい」と考える求職者が多く、
情報をしっかり伝えることさえできれば、中小企業でも“選ばれる求人票”は作れます。
では、どんな情報を盛り込めば、求職者の心に響く求人票になるのか。
まずは、求職者が中小企業で働くことについて感じている“メリット”と“デメリット”を整理してみましょう。
【中小企業で働くメリット】
✔ 配属希望が通りやすい
✔ 責任ある仕事を任されやすい
✔ 自分の裁量で動ける業務が多い
✔ 「会社」よりも「自分」で評価されやすい
✔ 経営陣との距離が近い
✔ 意思決定が速く、柔軟な対応ができる
✔ 会社の成長を身近に実感できる
【中小企業で働くデメリット】
✔ 責任や業務の幅が広く、負担が大きいことがある
✔ 知名度や社会的信用が限定的
✔ 安定性や福利厚生に不安を感じる人もいる
✔ 人間関係が固定化されやすい
✔ 成長機会やスキルアップの機会が少ないと思われがち
こうしたイメージのうち、メリットに該当する部分を“自社の強み”として、できるだけ具体的に求人票で伝えることが重要です。
(記載例)
「社長も含め、全社員が同じフロアで働いており、肩書に関係なく意見交換ができる風通しの良い職場です」
「営業エリアは岐阜県内中心。転勤や長距離出張はなく、地域に根差して安定的に働けます」
「入社3年目で主任に昇格した社員も。年齢・社歴に関係なく、成果を正当に評価する制度があります」
「商品開発や改善提案など、入社1年目からプロジェクトに参加する機会があります」
「年1回、社長と全社員が1対1で面談。働き方の相談やキャリア希望を直接伝えることができます」
一方、“デメリット”とされがちな部分についても、
“反証”という形で安心材料を提示することで、求職者の不安を払拭することができます。
(反証の記載例)
◆「安定していないのでは?」
「創業45年。大手◯◯メーカーと20年以上継続して取引しており、安定した経営基盤があります」
「5期連続で黒字経営を継続。無借金経営で、自己資本比率も70%以上を維持しています」
◆「福利厚生が少ないのでは?」
「インフルエンザ予防接種は全額会社負担。健康診断のオプション検査も補助あり」
「社員の誕生日には会社から祝い金を支給。年1回の慰労旅行も実施」
◆「人間関係が固定されて閉塞感がありそう」
「毎月“部署シャッフルランチ”を実施し、他部署との交流を活発に行っています」
「職種に関係なく意見を出し合う“全社改善会議”を月1回開催しています」
◆「スキルアップの機会が少ないのでは?」
「資格取得支援制度あり。受験料や講座費用は全額会社負担。合格時には報奨金も」
「外部研修・セミナーの参加は自由。内容に応じて勤務扱いでの参加もOKです」
中小企業にとって大切なのは、
「大手企業にはない“働く魅力”を、誰にでも伝わるかたちで表現すること」です。
求人票は、ただの“募集ツール”ではなく、「自社の良さを言語化する手段」であり、
“理想の人材に出会うためのラブレター”とも言える存在です。
「中小企業だからこそ選ばれる」――そんな求人票づくりを、ぜひ意識してみてください。
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次号(第31号)は、2025年4月25日(金)配信予定です。
「正職員就労の機会に恵まれなかった就職氷河期世代を狙う!」というテーマについてお伝えします。
引き続き、ご愛読よろしくお願いいたします!