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五十川将史の「ハローワーク採用を極める」メールマガジン
第38号 2025/6/13 発行
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皆さん、こんにちは。社会保険労務士の五十川将史(いかがわ まさし)です。
いつもメールマガジンをご覧いただき、誠にありがとうございます。
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【テーマ】
Q. 年齢制限をしたいのですが、ハローワークの求人票でも可能ですか?
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A.「例外事由」に該当する場合は可能ですが、
優秀な人材を取りこぼさないためにも、慎重な判断をお勧めします。
【解説】
ご存じの方も多いかと思いますが、求人票における年齢制限の扱いについては、雇用対策法第10条により、「定年がある場合」や「キャリア形成を目的とする若年者限定募集」などの例外事由を除き、原則として年齢不問でなければなりません。
とはいえ、実際の現場では、求人票に「年齢不問」と記載しつつ、ハローワークからの紹介電話に対して「○歳以上は採用する予定がありません」と明言される企業もあります。
このようなやり取りは、ハローワーク職員が閲覧できるシステムに記録として残ることがあり、
後日、同年齢の求職者が応募を検討した際に、「以前、この年齢の方が応募を希望されたときに断られています」と説明される場合もあります。
結果、「それなら応募しても無駄だからやめておきます」という方もいれば、
「求人票に年齢不問って書いてあるのに、なぜダメなんですか?」と憤る方もいます。
たしかに、企業側として本音をハローワークに伝えておくことで、年齢を理由とする応募を間接的に減らすことができる、という“表面的なメリット”はあるかもしれません。
しかしその一方で、求職者やハローワークの職員から「年齢で門前払いをする、法令遵守の意識が低い会社」と見なされるリスクも抱えており、企業イメージに悪影響を及ぼす恐れがあります。
加えて、そもそも年齢制限を設ける理由そのものが妥当かどうかを、いま一度見直す必要があります。
たとえば、体力を要する現場業務で「若年層の方がパフォーマンスが高い傾向にある」といった理由であれば、一定の合理性はあるかもしれません。
しかし、実際には「若いほうが賃金が安く済むから」「雑用も頼みやすいから」といった、会社都合の理由で年齢制限を設けている例も少なくありません。
しかも、若くても体力に不安がある方がいれば、年配でも元気でパワフルな方もいます。年齢だけで可能性を狭めてしまうことが、必ずしも合理的な判断とは限らないのです。
こうした企業側の都合と結びつきがちな考え方に、「転職35歳限界説」があります。これは、「35歳を超えると転職成功率が下がる」という“都市伝説”のようなもので、実際に求人票で「35歳以下」と年齢制限を設けている例はいまだに見受けられます。
これは裏を返せば、企業自らが採用のチャンスを捨ててしまっているとも言えます。
年齢にとらわれず、経験・人間性・スキルなど多面的な視点で選考した方が、結果として自社にフィットする“いい人材”に出会える可能性は高まります。
むしろ、このような年齢制限が横行している現状を逆手に取り、
「他社が見向きもしない年齢層に、あえて門戸を開く」という戦略をとる企業もあります。
たとえば、
- 年齢制限を撤廃する
- 上限年齢を引き上げる
- 「35歳以上歓迎」などとあえて明記する
といった取り組みは、年齢を理由に選考の機会を得られなかった層にとって大きな希望となり、企業の誠実さや本気度として強く伝わります。
【まとめ】
年齢制限は、法的にも慎重な対応が求められるだけでなく、
企業の姿勢や「人材を見る目」を問われる項目です。
だからこそ、「年齢」で足切りするのではなく、
「人材としての可能性」で判断する採用を意識してみてください。
それが、思いがけない優秀な人材との出会いにつながるかもしれません。
いま、経営者や採用担当者の“目利き力”が試されています。
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次号(第39号)は、2025年6月20日(金)配信予定です。
テーマは「求人票作成の『P-D-Sマネジメントサイクル』でブラッシュアップ」。
引き続き、ご愛読のほどよろしくお願いいたします!