□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
五十川将史の「ハローワーク採用を極める」メールマガジン
第31号 2025/4/25 発行
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
皆さん、こんにちは。社会保険労務士の五十川将史(いかがわ まさし)です。
いつもメールマガジンをご覧いただき、誠にありがとうございます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「就職氷河期って、どのあたりの年代なんですか?」
そう聞かれると、私は思わずこう答えてしまいます。
「ちょうど私ですよ(笑)」
実は私(五十川)自身も、2000年3月に大学を卒業した“就職氷河期世代”のど真ん中。
当時は「とにかく内定がもらえるだけでも御の字」と言われていた時代で、
選考の案内すら来ない企業も多くありました。
希望の仕事に就けなかった友人もいれば、いったん就職せずアルバイト生活を選んだ人も。
そんな中、「自分の人生をどう組み立て直すか」と悩みながらキャリアを切り拓いてきたのがこの世代です。
だからこそ私は、この世代の可能性を、いち採用支援者としても強く信じています。
今回はそんな“就職氷河期世代”、今では「ミドルシニア世代」と呼ばれる方々を、
戦力として迎えるための考え方と求人票づくりのポイントをお届けします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【Q&Aコーナー】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Q. 「正職員就労の機会に恵まれなかった就職氷河期世代」も採用できますか?
A. もちろんです。彼らの特性や背景を理解し、企業の経営課題と重ねて採用戦略を設計すれば、非常に有力な戦力となり得ます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【テーマ】
正職員就労の機会に恵まれなかった就職氷河期世代を狙う!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
就職氷河期世代――
それは、1993年(平成5年)から2004年(平成16年)ごろ、
雇用環境が極めて厳しい時期に就職活動をした世代です。
正社員の採用枠が激減し、内定獲得すら困難な中、
本来の能力を活かしきれないままキャリアをスタートした方も少なくありません。
その影響で、いまなお非正規雇用やキャリアの中断を経験している方も多く、
“本来力のある人材が埋もれてしまっている”世代でもあります。
そして2025年度(令和7年度)から、厚労省の制度が改正され、
「就職氷河期世代限定(歓迎)求人」は、
「中高年層(ミドルシニア)限定(歓迎)求人」に名称変更。
対象年齢も35歳~59歳に大幅拡大されました。
これからは、このミドルシニア層に向けて、戦略的にアプローチする時代がやってきます。
────────────────────────────
◆(1)世代の特徴と傾向を知る
────────────────────────────
中心層となる42歳〜51歳は約379万人、
うち39万人が不本意な非正規雇用にあると言われています。
とはいえ、ネガティブな印象だけで語るのは早計。
この世代には、次のような強みがあります。
✔ 働く意欲が高い
✔ 多様な仕事経験があり、柔軟性がある
✔ 賃金アップへの意欲が強い
✔ スキルアップや学びへの意識が高い
────────────────────────────
◆(2)年齢・職歴別に採用戦略を考える
────────────────────────────
同じ就職氷河期世代の中にも、多様な価値観・経験・スキルが存在します。
そのため、“年齢”と“職歴”の両面からセグメントして採用戦略を立てることが効果的です。
【年齢別の傾向と特徴】
・36〜40歳:ゆとり世代(デジタルネイティブ)
→ SNSやITツールに抵抗が少なく、柔軟な発想やマルチタスクに慣れている傾向。
→ IT化が遅れている現場や、若手との橋渡し役としての活用が有望。
・41〜50歳:ポスト団塊ジュニア(堅実志向)
→ 家庭や地域とのバランスを大切にしつつ、安定した働き方を求める層。
→ 地元密着型企業にとって、腰を据えて働いてくれる人材として最適。
・51〜55歳:バブル後期世代(実直型・新人類)
→ 組織への忠誠心や礼儀正しさを重んじる一方、上から押し付けられることには敏感。
→ 経営層の右腕や職人系ポジションでの“後継者育成枠”としての活用が有効。
【職歴別の分類と対応策】
・非正規を転々としてきた“多業種経験型”
→ 業務の多様性に強く、柔軟な働き方に適応できる反面、定着支援が必要。
→ 入社後のフォロー体制や、短期的な役割明示が安心材料に。
・同一職場で長く働いてきた“非正規安定型”
→ 責任感や協調性があり、正社員登用を強く希望している層。
→ 生活の安定や将来ビジョンを提示できると、応募・定着につながる。
・短期の正社員経験を持つ“離職型”
→ 本来の能力や責任感はあるが、過去に適職や職場に恵まれなかったケースが多い。
→ キャリア再構築の機会を提示し、「やり直せる環境」を前面に押し出すと効果的。
────────────────────────────
◆(3)求人票の作成ポイント
────────────────────────────
求人票づくりのカギは、「誰に、どんな未来を届けるか」を具体的に描くこと。
特にミドルシニア層(就職氷河期世代)をターゲットにする場合、これまでのキャリアに対する“リスタート支援”の視点が不可欠です。
求人票作成の4ステップ:
① 情報収集:世代の背景を知る
・過去の就職環境、転職傾向、働き方への価値観などを把握
・行政の統計や厚労省の就職氷河期支援ページなどを活用
② ターゲット像を具体化する
・「40代前半、製造業経験あり、安定志向で地域に定着したい人」
・「事務職を長年非正規で続けてきたが、正社員登用を希望している女性」
といったように、ペルソナを明確にすることで記載内容も具体化しやすくなります。
③ 魅力の言語化:共感ポイントを盛り込む
・「ここなら安心して働けそう」と感じてもらう一文がカギ。
・単なる制度説明ではなく、「誰のために・どんな背景で」用意された制度なのかが伝わるとより効果的です。
<記載例>
・「未経験の方には、年齢の近い先輩スタッフがマンツーマンでOJT。少しずつ慣れていただけるよう配慮しています」
・「事務職に就いていた方のPCスキルを活かせる業務があり、入社後に業務に合わせたスキルアップ支援も行います」
・「転職回数やブランクの有無は問いません。面接では過去より“これから”を重視します」
④ 未来像の提示:成長・定着のイメージを明示
・ミドルシニア世代にとって、「今後どんな働き方ができるか」が応募の決め手になります。
・キャリアパスや職場での役割、成長支援制度の有無などを丁寧に説明しましょう。
<記載例>
・「昇格や職域の拡大は年齢・社歴を問わず評価され、実績に応じて管理職や専門職への登用もあります」
・「外部セミナーへの参加費用は会社が全額負担。業務時間中の受講も可能です」
・「50代で入社したスタッフが、現在は新人育成の中心メンバーとして活躍中」
そして最後に重要なのは、「求めすぎないこと」。
氷河期世代の多くは「応募条件が厳しい」と感じて、最初から求人をスルーしてしまう傾向があります。
✔ 経験や資格の有無を「不問」にするか、もしくは「必須」ではなく「歓迎」レベルに緩和する
✔ 書き方を変えるだけで、応募のハードルはグッと下がります
たとえば、
NG:「経理経験3年以上/日商簿記2級必須」
OK:「仕訳や会計ソフトの基本操作ができる方(実務経験は問いません)/資格取得を目指す方も歓迎」
求人票は“取扱説明書”ではなく、“ラブレター”です。
読み手(求職者)が「自分のことを考えてくれている」と感じる内容になっているか、
今一度、見直してみましょう。
────────────────────────────
「氷河期世代」は、機会を逃しただけの優秀な人材。
────────────────────────────
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
次号(第32号)は、2025年5月2日(金)配信予定です。
テーマは「競合他社がどのような条件で求人を出しているか知りたいのですが?」
引き続き、ご愛読のほどよろしくお願いいたします!