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五十川将史の「ハローワーク採用を極める」メールマガジン
第29号 2025/4/11 発行
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皆さん、こんにちは。
社会保険労務士の五十川将史(いかがわ まさし)です。
いつもメールマガジンをご覧いただき、誠にありがとうございます。
最近、ある企業の方から「“年齢・資格・経験不問”って書いてるんですけど、
なかなか応募が来ないんです」とご相談を受けました。
確かに、一見すると“間口が広くて誰でも応募できそうな求人”なんですが、
よく見ると――どんな人に来てほしいのか、まったく伝わっていない。
このパターン、実はとても多いんです。
「不問」と書けば広く届くと思っていても、
“誰に向けた求人なのか”が曖昧だと、求職者の心には響かない。
今回のテーマは、そんな「求人票に、誰を想定して書くか?」という視点から、
特定の求職者のニーズに合わせて“届く求人”にする工夫についてお話しします。
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【Q&Aコーナー】
Q. 「年齢・資格・経験不問」と書いても、なかなか応募がありません。どうすれば?
A. 特定の求職者のニーズに合った情報を、求人票の中でしっかり伝えることが重要です。
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【解説】
求人票の条件欄には「年齢・資格・経験不問」と記載されることが多くあります。
これは、応募できる人の間口が広がるというメリットがある一方で、
「この会社は自分に合いそうだ」と感じてもらうには不十分なケースも多いのです。
そこで今回は、「特定の求職者層」に絞って求人票を作成するという視点をご紹介します。
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◆ターゲット①:UIJターン希望者
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地元へのUターンや地方へのI・Jターンを考える求職者にとって、
最大のハードルは「仕事の確保」です。
中小企業庁の調査(※)によれば、
UIJターン経験者の多くが、以下のような不安や課題を抱えています。
- 地元で希望の仕事が見つからない
- 前職よりも収入が下がることへの不安
- 地域に溶け込めるか、職場の人間関係になじめるか心配
こうした不安に対して、求人票の中で丁寧に情報を伝えることが、応募への一歩となります。
たとえば、
✔ 仕事内容やキャリアパスを具体的に記載する
✔ 地元での暮らしやすさ、生活環境を紹介する
✔ 給与の水準や支援制度(引越補助など)を明示する
✔ 社風や中途入社者の割合、受け入れ体制を伝える
さらに、ハローワークの求人票にある
「UIJターン歓迎」のチェック項目を設定することで、
ハローワークの検索機能でもヒットしやすくなり、
移住希望者や自治体の支援機関からの紹介にもつながる可能性があります。
※出典:中小企業庁委託「中小企業・小規模事業者の人材確保と育成に関する調査」(2014年、野村総合研究所)
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◆ターゲット②:「入居可能住宅あり」を探している求職者
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求職者の中には、「実家を出て自立した生活を始めたい」
「通勤に時間がかかるので職住近接を希望したい」といったニーズを持つ方が少なくありません。
そうした方にとって、「住まいの確保」は働くうえでの大きな関心事であり、
企業にとっても求人上の強力なアピールポイントになります。
ハローワークの求人票では、「入居可能住宅あり」という
項目にチェックを入れることができ、この項目で求人を検索する求職者も一定数います。
私自身がハローワーク窓口で働いていたときにも、こんなことがありました。
ある求職者が「希望していた職種や賃金額とは少し違うのに、
なぜこの求人に応募したのか」とお尋ねすると、
「社宅があるからです」と答えた方が何人もいらっしゃいました。
また、岐阜県内のある事業所が「入居可能住宅あり」に
チェックを入れて求人票を見直したたところ、
長野県など県外から3件の応募があり、
事業所の方が非常に驚かれていたというエピソードもあります。
それほど、「住まい」は求職者にとって行動を左右する要素なのです。
求人票に記載する際は、以下のような具体的な情報も盛り込みましょう:
✔ 社宅または借り上げアパートの所在地(会社からの距離など)
✔ 部屋の広さ(例:1K/6畳+キッチン)
✔ 会社負担・自己負担の割合(例:家賃の7割を会社負担)
✔ 設備内容(エアコン・バス・トイレ・家電・Wi-Fi など)
✔ 引越費用の支援制度の有無
このような情報がしっかり記載されていれば、
求職者も「自分が働き始めた後の生活」を
イメージしやすくなり、応募のきっかけになります。
「入居可能住宅あり」の項目は、UIJターン希望者だけでなく、
地元の若年層・単身者・中途入社希望者など、
さまざまな層に対して有効なアピールポイントです。
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◆ターゲット③:中高年層(ミドルシニア)を歓迎する求人
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2025年4月(令和7年度)から、厚生労働省の制度変更により、
これまでの「就職氷河期世代限定・歓迎求人」は、
【中高年層(ミドルシニア)限定・歓迎求人】へと名称が変更され、
対象年齢も「35歳~59歳」へと大幅に拡大されました。
この世代には、卒業時に正社員としての就職機会に恵まれなかった方や、
その後も非正規雇用での勤務が続いていた方が多く含まれます。
しかし、年齢を重ねた今だからこそ、
✔ 責任感があり、安定した働き方を望んでいる
✔ 人生経験や職務経験を活かした即戦力になり得る
✔ 家庭や地域を支える中核人材としての意欲がある
といった強みを持つ人材層です。
実際には「ミドルシニア歓迎」と記載しているにもかかわらず、
求人票のどこを見ても、その世代に対する配慮がまったく感じられないケースも多く、
それでは求職者の心には届きません。
この年代に響く求人票にするには、単なる文言だけでなく、
具体的な歓迎の姿勢や受け入れ体制を伝えることが重要です。
たとえば、以下のような内容があると説得力が格段に増します。
✔ 未経験者を想定した丁寧な業務マニュアルやOJT体制の有無
✔ 体力面への配慮(力仕事なし、立ち仕事の負担軽減など)
✔ 「同年代の社員が在籍しています」といった記載による安心感
✔ 家庭との両立に配慮したシフト調整や時短勤務制度
✔ 過去に50代で入社した社員の事例やキャリアのモデル紹介
✔ PCスキルや社内ルールについてのフォロー体制
また、年齢制限(35歳以上59歳以下)を設ける場合は、特例に基づいた明示が必要です。
この表現をすることで、ハローワーク職員の紹介対象としての優先度が上がると同時に、
求職者側も「自分の年代が本当に求められているのだ」と実感できます。
“歓迎されている実感”は、応募行動の最大の後押しとなります。
「言葉だけでなく、内容で伝える」
――それが、ミドルシニア世代の採用成功に向けた最初の一歩です。
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次号(第30号)は、2025年4月18日(金)配信予定です。
「中小・零細企業なので,ハローワークでも採用できないのでは?」というご質問にお答えいたします。
引き続き、ご愛読よろしくお願いいたします!